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逆転満塁ホームラン!
第8章 グッバイオオサカ

残されたのは天草以外のウィングスメンバーと、意気消沈しているチワワ先輩のみだ。

先に口を開いたのは芹沢君。

「ついに振られたよ、あの天草さんが」

「それな、芹沢。オレも巨人から移ってもう十年手前までキテるけど、アイツが振られる所って初めてだわ。」


「そりゃ振られるっしょ」

「はあ?柳、お前分かってたのかよ」


「まあ、関西風に言うなら"ぼちぼち"っすね。」

「だって、吉瀬ちゃんには愛情表現を多少強引だけど心配とか行動でキチンと表してくれる住友総司っつー友達が居るんすよ。」

「前職の時の上司……まあ、みんな知ってるから言うけど青山先生だって、別れ際は何であれ吉瀬ちゃんの事は可愛がってたし。」


「愛情たっぷりの行動や言葉で示してもらってきた、そんな環境の中で育ってきたから吉瀬ちゃんっつー誰にも靡かない芯の強い子が出来たんすよ。」


「そこにイキナリ、自分が好きだからとかで吉瀬ちゃんの意見も聞かずに東京に来させておいて……」

「尚かつ、いきなり嫉妬や独占欲でキレ出す天草の事、この子が好きになるワケないじゃないっすか」

天草が落としていったセブンスターの箱から勝手に煙草を一本取り出した柳君は、いつもとは全然違う冷静なトーンでそう言いながら灰皿の方へ向かった。

扉を開けているため、私達は彼の表情が見えるし彼も私達の表情が見える。


「お前、幼馴染なんだろ?じゃあ忠告してやれば良かったのに。そんなんじゃダメだぞって」

「まあ面白かったじゃないっすか、アイツがあんなに必死こいてるの。」


「ここからっすよ、ここからアイツがどう動くかで成長するのか、餓鬼のまま恋愛するのか。それが変わってくるんすよ。」

「可愛い子ほど旅をさせろって言うでしょ。」


「なんか……いつもの柳君じゃないみたい。」

「吉瀬ちゃーん、ピッチャーは冷静な部分が無いとダメなんだべ?」

ニコッと笑った彼は、ああいつも通りの柳恭平だ。

どこか可笑しくなって笑って見せると彼もまた白い歯を見せて笑ってくれた。

子供そうに見えるけど……もしかしたら柳君は天草の保護者役なのかもしれないな。

バラエティーをみてる限り、真逆の関係に見えたりもするこの二人。

でも、そんな二人の本当の姿を知れるのは私が東京ウィングスのスタッフとしてやっていく、と決意表明したからなのだろう。


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