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逆転満塁ホームラン!
第10章 九月のゲーム差
「まあ、あの子の目当ては俺やけどな。」
既に私服に着替えた天草が煙草かスマホか…何かをバッグの中から探しながらニヤリと、そんな事を言う。
「はあ?お前そんな事言ってんべ?」
「だってこの前の飲み会の時に俺ライン聞かれたもん。お前ら誰もトマパンの連絡先知らんやろ?」
「えっ、天草さんトマパンの連絡先知ってるんすか?!しかも相手から聞かれたんすか?!」
大興奮気味の高卒ルーキー加木屋君に、そんな事を言われると超絶ドヤ顔で【おん。】なんて返事して……コイツはやっぱり馬鹿なのかな。
「や、あれは俺か天草のどっちかを欲しがってるんだと思うべ。お前の場合、噂になったのがアナウンサーも居たから自分でもイケると思ってんだろ。」
「つれへん奴やな、お前は。」
「本当の事言っただけじゃんね、なあ吉瀬ちゃん。」
「天草の事好きってトマパン、かなりの尽くしたいタイプかエムかのどっちかやと思うわ。有りえへんもん。」
「……っ、うっさいわチビ!」
【お前ら喧嘩するなら外でしろよ〜】という内海さんの呆れた声を聞きながら、お互い顔をそっぽ向けた。
っていうか腹の底を分かりながら連絡先を教えるなんてアホのすることやん。普通なら警戒して教えないだろう。
「あ、もう行かなきゃ」
「でも吉瀬ちゃん、総司君にもちゃんと報告しないと見つかったら何か「大丈夫大丈夫!既読つけてないし、第一アタシも子供ちゃうんやから、そんな事までアイツの言う事聞いてられへんもん!」
「……。」
「じゃあみんな、先に失礼します!明日も頑張りましょう!」
大きく敬礼をして部屋を出た私の背中が受け止めるのは【何かあったらすぐ連絡してこいよー!】と云う過保護極まりない柳君の声。
何をそんなに心配してるのか分からないけれど──昔からダメと言われた事ほどしたくなる性格のわたしは、やっぱり何処か心がウキウキしていた。