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逆転満塁ホームラン!
第1章 銀行系の御曹司クン
「っつぁー!ホンマに腹立って仕方がない!」
ビールジョッキを力強くカウンターの机に置くと、隣の男がマスターと顔を見合わせて大きく笑った。
「絶好調だな、まだ三杯目じゃん?」
ツマミで頼んだキムチの盛り合わせともやしナムル。
そして、焼き上がった上タンと上カルビを軽くお箸で突つきながら止まることの知らない私の左手は再度ジョッキを持ち上げる。
「なに、住友。あんたこれはアタシが悪いって言いたいん?」
「いや、そこまでは言ってねえべ。ただ、その世界では学歴とか家柄が必要なのはお前も分かってた話だろ。」
「なっ!……そうだけど!」
八人掛けのカウンターと二つのボックス席。
その一つを占領している四人組の男達は、特別騒ぐこともなく淡々とお肉を頬張ってはハイペースでワインを空けていた。
この北新地と云う土地の、そこそこお高いことで知られる【肉匠・あんじ屋】であれだけの赤ワインを飲むんだから、きっと裕福な事は間違いない。
場違いなのは、高卒なのに運と愛嬌と若さだけで大阪市議の青山先生の私設秘書になった私だけだろう。
「第一、あんたみたいに苗字が銀行で大グループの御曹司からしたらね、あたしがじゃじゃ馬なのは分かってんのよ。」
「別に御曹司じゃねえし」
「はあ?!祖父のそのまた祖父が住友東京銀行の初代頭取だった家系の男がよく言えたもんやな!」
「でも俺の親父は銀行頭取じゃねえじゃん。」
「系列の住友グループのコンクリート会社の代表やろ!はあ、結束の住友と言われる旧財閥のボンボンには私の気持ちなんて分からへんわな。」
「そんなに言うならお前も素直に俺に奢られとけばいいのに。」
「それとこれとは別やの!あんたと私は友達やから性別も家柄も関係ない。だから奢られるのは無理!……って事でどうせ自費やし、マスター!ビールおかわりで!」