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逆転満塁ホームラン!
第13章 バタバタの一週間
10コールに掛からないくらいかな?切ろう、と思って耳を離した瞬間に聞き慣れた声が聞こえた。
「もしもし?」
「あ、もしもし…ってか外?」
非常にウルサイ空間に居ることは間違いない。
そして、そんなことを思った数秒後に高い女の子複数人の声とノリノリの藤堂くんの一発ギャグが聞こえてきて全てを理解した。
時刻は23時少し前。
軽くトレーニングをしてからナイン組で夕飯を取って、広島1番の繁華街である流川に出たって所だろう。
多分、彼達が居るのは流川の中で超一流キャバクラと云われてる【アントニュークラブ】だと思う。
あそこは松本くんの元カノが在籍してる店らしい。
「ん、まあ。…それより何やねん、お前が電話なんて」
「ううん。土間パンのニュース見たからさ」
「……ちょ、待ってな。オイ柳、俺電話来たからちょー外出てくるわ。直ぐ戻ってくるし適当にしてて」
『誰だべ?』
「蒼井」
『へえ、番号交換したとかやるじゃん?まあ、了解。ゆっくり話してこいや。』
声しか聞いていないはずなのに柳くんのニヤニヤした顔が想像出来るなんて私の脳内も完全にウィングスの選手陣で埋め尽くされてきてるかも。
買ったばかりのミルクティーを飲みながら、彼が静かな場所へ移動するのを待った。
「…もしもし?」
「あ、もうオッケー?」
「ん。」
「本題っていうか、その…何で電話したかってことやねんけど」
「別に否定も肯定も要らんねんけどさ。ただ、有難うって伝えたくて。」
【否定も肯定も要らない】……こう言わなくちゃ可笑しな所で頑固な天草は私が有難うと言った所で憎まれ口を叩くに決まってる。
土間パンが退社して芸能界も引退する運びになったのは──ウィングスの一番人気で有る天草の力添えもカナリ合ったはずだしね。