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Eternal
第5章 :Reverie-夢想-

君には囮になってもらう――
録音を再生した時にその言葉はしっかりと入っていた。犯人は友人を囮にしてあの場所で彼女を浚うつもりなど全くなかったのだ。彼女の友人の携帯電話が彼女のそれに繋がっていることも分かっていた上であのような挑発的な言葉を発したに違いない。彼女の友人を痛めつけ、そしてそれを彼女のせいにさせる。自分のせいで友人がああなってしまったと罪悪感を感じた彼女は必ずミスコンに参加をするはずだと睨んでのことだ。全て計画されたこの件は、俺にとってはとてもシンプルで分かりやすい。それなのに彼女はそうではない。怒りの感情が先走っていて、これが罠であることに全く気付いていないのだ。
「あんたが動かずとも、いずれはあちら側から動きはある。それまではじっとしていることだ」
俺がそう助言しても彼女の頭は常に左右に振り続けている。
「どうして俺の言うことが聞けない? 落ち着いて考えたら理解できることだろう? これが罠だってことが!」
「でも、私は友人をあんな目に遭わせた犯人を許せないんです!」
許せないのは理解できる。しかしそのような非効率的なことをして果たして友人が喜ぶだろうか? 俺は自分の中に苛立ちが増大されていくのを感じた。しかし今、ここで言い合いをすると彼女は余計に頑なに自分の意見を押し通そうとするのではなかろうかと考えて、それをぐっと抑えた後、これが理性というものかと初めて知る。
「私がミスコンに参加をしたら、その主催者は必ず表側に出てくるはずです。 そうしたら警察は掴まえやすくなるんじゃないですか?」
しかし俺のまだ未熟な理性はすぐに粉砕する。それに今の彼女の言葉は許せなかった。自分から勝手に危険地域に踏み込もうとしているのに、言い方はまるで警察に言われたからしてやるのだともとれるような意味合いの言葉だったからだ。
「誰も警察に協力しろとも言ってないだろう! それはただ単にあんたの自己満足だっ!」
声を荒げるのはこれが初めてではない。しかしこの時こそは自覚した。腹の底からの怒りを。
彼女は俺の怒鳴り声に両肩をびくりと震えさせた。彼女にとっても俺の本気の怒りは初めて見るものだったからだろう。
「ご、ごめんなさい…… 少し落ち着きます。でも、私は……」
ああ、これで彼女の涙を見るのは何度目か。伏し目がちの目頭から雫型の水滴が俺の瞳に映った。
録音を再生した時にその言葉はしっかりと入っていた。犯人は友人を囮にしてあの場所で彼女を浚うつもりなど全くなかったのだ。彼女の友人の携帯電話が彼女のそれに繋がっていることも分かっていた上であのような挑発的な言葉を発したに違いない。彼女の友人を痛めつけ、そしてそれを彼女のせいにさせる。自分のせいで友人がああなってしまったと罪悪感を感じた彼女は必ずミスコンに参加をするはずだと睨んでのことだ。全て計画されたこの件は、俺にとってはとてもシンプルで分かりやすい。それなのに彼女はそうではない。怒りの感情が先走っていて、これが罠であることに全く気付いていないのだ。
「あんたが動かずとも、いずれはあちら側から動きはある。それまではじっとしていることだ」
俺がそう助言しても彼女の頭は常に左右に振り続けている。
「どうして俺の言うことが聞けない? 落ち着いて考えたら理解できることだろう? これが罠だってことが!」
「でも、私は友人をあんな目に遭わせた犯人を許せないんです!」
許せないのは理解できる。しかしそのような非効率的なことをして果たして友人が喜ぶだろうか? 俺は自分の中に苛立ちが増大されていくのを感じた。しかし今、ここで言い合いをすると彼女は余計に頑なに自分の意見を押し通そうとするのではなかろうかと考えて、それをぐっと抑えた後、これが理性というものかと初めて知る。
「私がミスコンに参加をしたら、その主催者は必ず表側に出てくるはずです。 そうしたら警察は掴まえやすくなるんじゃないですか?」
しかし俺のまだ未熟な理性はすぐに粉砕する。それに今の彼女の言葉は許せなかった。自分から勝手に危険地域に踏み込もうとしているのに、言い方はまるで警察に言われたからしてやるのだともとれるような意味合いの言葉だったからだ。
「誰も警察に協力しろとも言ってないだろう! それはただ単にあんたの自己満足だっ!」
声を荒げるのはこれが初めてではない。しかしこの時こそは自覚した。腹の底からの怒りを。
彼女は俺の怒鳴り声に両肩をびくりと震えさせた。彼女にとっても俺の本気の怒りは初めて見るものだったからだろう。
「ご、ごめんなさい…… 少し落ち着きます。でも、私は……」
ああ、これで彼女の涙を見るのは何度目か。伏し目がちの目頭から雫型の水滴が俺の瞳に映った。

