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サイドストーリー9
第20章 「砂漠の薔薇」
「こーちゃん」

俺の事をそう呼ぶ子がいた。
時に、愛しそうに
時に、楽しそうに
時に、優しく
時に、すねて。

「こーちゃん」

そう呼んで全てを許してくれていた子がいた。

俺を、愛して
俺を、許して
俺を、包んでくれた。

その呼び方は付き合ってから8年たっても変わらなくて
俺は戸惑っていたのかもしれない。

彼女だけを愛していればいい学生時代と違って
いくつも重なる仕事と納期
食事中も頭から離れないプログラミングと数列に
いつしかそれだけに追われ、他の事がめんどくさくなっていった。

「こーちゃん」

そう呼ぶ声が
次第に、少なくなって
次第に、悲しそうに
次第に、乾いた口調になって
俺はますますその声から遠ざかった。

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