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サイドストーリー9
第23章 キミの体温 ボクの吐息②
***

「ふふふ」
「なに?」

希望が山田とデートだと連絡してきたその日。
嬉しそうに夕飯前にめったに出さない上等なワイングラスに赤ワインを注ぎながら洋子が笑った。

「思い出すな、と思って」
「なにを?」
「結婚前のボジョレーヌーボーの解禁日」
「あ、ぁ」

世の中も俺も浮かれてたな。
ボジョレーの解禁日に平日だってかまわず夜中に飲んでいたっけ。

「はい。12時でもないし、洒落たバーでもないけど」
そう言ってワイングラスを俺に渡した。
「12時でもないし、洒落たバーでもないけど。
相手が洋子で、自宅だって方が俺にはワクワクするけど」

「あの頃より素敵よ。新田くん」
あの頃の呼び方で呼ばれるといまだにドキドキする。
「あの頃より可愛いよ。洋子」


そういって俺たちは解禁時間を21時間も過ぎたボジョレーで乾杯した。

END***

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