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第4章 始まりの夏(残暑)

「おはよう」

藤沢ユウカは口元に微笑みを浮かべ、昨日の席替えで真後ろ席になった翔也に声をかけた。

翔也も「おはよう」と返す。

彼女はクスッと笑ったような表情をしてからバッグからペンケースや教科書を出して、机の中に入れ込んでいた。
シャンプーの香りだろうか、彼女が後ろを向いた瞬間にフワッといい香りが漂ってくる。
そしてバッグからペットボトルのレモンティーを取り出して、翔也に横顔を向けて一口口に含んで喉を潤した。

座ったまま、翔也の方を振り返って再び声をかけてきた。

ユウカ「ねぇ、翔也くん今日の漢文の宿題やった？？」

急な予期してない話題に翔也は一瞬返答するのに間ができてしまった。

翔也「えっ、宿題？」

ユウカ「夏休み前に言われてたヤツらしいよ？」

翔也「そんな事、言われてたっけ？」

ユウカ「ふふっ、やっぱりやってないよね！」

藤沢ユウカは少しイタズラっぽく笑った。

翔也「・・・うん」

ユウカ「私も昨日の夜ユミに言われて急いでやったの」

翔也「どんな宿題だったか、全然思いだせないんだけど」

ユウカは机の中から漢文の教科書を取り出して、中盤に近いページを開いて翔也の机の上に置いた。

ユウカ「ここと、あとここ」

翔也「覚えないな、やっぱり」

ユウカはまた微笑んで、

ユウカ「写していいよ」

と小声でささいた。翔也に教科書を渡す。

翔也「い、いいの？ありがとう・・」

彼女の教科書は非常に綺麗な字で回答欄が埋められていた。
ユウカの字は女性らしく少し丸みがあって文章のバランスが取れたものであった。