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第2章 危ない立ち回り(大学３年の夏)

「それ、美味しい？」

薄っすらと口元を緩めた彼女が話しかけてきた。

彼女はさっきまで貸し切った大部屋の真ん中のテーブルでワイワイと盛り上がっていたのだが、どうやら御手洗いに席を外していたようだ。
大部屋の扉を開いてすぐの場所に座っていたサトルの横に腰掛けた。

サトル「少し休憩ですか？」

ユウカ「そうなの、あっちはみんなスゴい酔っぱらいで元気だから私は少し休憩。笑」

ユウカ「こっちのみんなはどこかに行っちゃった？」

『こっちのみんな』とはさっきまでサトルの周りで飲んでいた連中だ。その中の１人が酒に弱いのに調子に乗って何杯もアルコールを注文して、只今トイレで籠城中だ。
それを何人かで介抱に向かっている。

それを伝えるとユウカは楽しそうに笑っていた。

ユウカ「ここに置いてあるのは貰っても大丈夫そうだね」

先程店員が置いていった3、4本まとめて置いてある所在不明のジョッキの中から青リンゴチューハイと思われる薄い緑色のジョッキを手に取った。

サークルの先輩の話によると当時の4年生がサークルのオリエンテーションにきた新入生のユウカを、可愛いからという理由でしつこく勧誘して半ば強引に入らせたらしい。

同じような理由で断り切れずにユウカが入らされたサークルは他にも2、3あると聞いた事がある。
実際どれだけのサークルに所属しているかは分からないが、ユウカがこのサークルの全ての行事に顔を出すわけではない。

メインの活動である冬のスノーボードシーズンが来ても、日帰りの日程の時に1回か2回参加するだけだし、
月に1回は開催される今日のような飲み会も積極的に参加している訳ではなかった。

ユウカへのイベント連絡はユウカの友達のマキから男子達の熱心な要望に押される形で毎回展開されるのであった。
友達のマキ先輩の顔を立ててか、2回に１回の割合で参加しているような形であった。

参加の情報がどこからともなく、事前に流れるのかユウカが来るときは男子の参加率がいつもより高くなるのだった。