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地獄
第2章 始まり
 奈緒子が服装を整え髪を手櫛でとく。本来なら鏡の前で落ち着いて行いたい。しかし坂本が来る。


 なんなのかしら?


 頭を捻りながら考えている。あれ以来、シャワーは良好なのだ。何をやり忘れるたのか?


 ピンポーン……。


 ドアチャイムが鳴る。
 奈緒子は深呼吸を一回すると、玄関へ行った。
 


 
 カメラで人を確かめる。
 奈緒子が頷きドアを開ける。
 このビルの管理人、坂本で間違いなかった。
 白髪混じりのオールバックに、大きくな狐目で低めの鼻に小さな唇、顔には皺が刻まれていて、少し強面である。
 白髪混じりで、皺が刻まれているとはいえそんなに歳を重ねている雰囲気はあまり感じない。さらに体格はしっかりしていて、縦も横もなかなかなの大きさだった。


「管理人さん何でしょう?」


 奈緒子が不思議そうに坂本を見る。紺の作業服に不釣り合いな大きな麻袋を持っていた。そして作業スラックスの尻ポケットに何かが膨らんでいる。


「田村さん、すみませんね。どうしてもやり忘れたことがありまして、今回はそれをさせて……いや」


 そこまで坂本が言うとドアを閉め。尻ポケットから何かを取り出し奈緒子の胸に押し付けた。


「な、なにを……いっ!」


 大きな声を出そうとした奈緒子だができなかった。なぜなら、ポケットから取り出した何かが仕事をした。
 それはバチバチと電気を流し、一瞬にして奈緒子を黙らせる。名前はスタンガンと言った。そう、あれだ。


「してやろう! ……なんだ? おねむか? 失礼な奥さんだな」


 野太い声で笑うと頰を舐める。化粧っ気はなく、代わりに薄い塩味がした。


 しばらく奈緒子は、起きそうな気配がない。
 よし! そんな感じでニタリと笑う。


 坂本が大きな袋を開くと、奈緒子を入れる。袋の口を塞ぐとそれを肩に担ぐ。ずっしり重い女だと教えてた。


「やっぱり可愛い、雌豚だな」


 ヘラヘラ笑いながら、ドアを開けた。
 始まるのだ、至福の時間が……。
 しかしそれは、奈緒子とって地獄の始まりだった。





 


 


 
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