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世界で一人だけの君へ
第4章  魔性の彼女
シンと静まり返るスタジオ。


電気の発する低周波が聞こえる。


暫くしてから


「カッッッット!!!」


監督の声で時間が動き出した。


「やるじゃない田辺くん。
 手加減しなくて良さそうね」


僕の耳元でそう囁いて松下さんは監督のもとへ歩いていった。

僕もあとから松下さんに続く


監督が僕に歩みより


「田辺くんがこんなにすごい役者だと思わなかったよ!」

と喜色満面で僕の肩を叩く。


ーーえ?! 役者? ぼく...が?




僕はどれほど疎いのだろう

どれほど盲目になっていたんだろう。



ただの15のデビューしたてのアイドルが役者なんて出来るわけがない


なのにすっかり槙さんに惑わされ彼女の掌のうえで役に成り切らせてもらっていることにすら



気付いていなかったなんて...











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