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世界で一人だけの君へ
第10章  出逢い
待ち合わせの時間まで2時間。

恵比寿の打ち上げ会場から青山まで何となく歩いていくことにした。

犬の散歩をしている人とすれ違ったり酔っぱらいに絡まれそうになったり、公園脇を通るとちょっとエッチな喘ぎ声が聞こえてきたり...
都会の夜は様々な営みが垣間見える。

青山辺りまで来てまだ30分以上時間があったので書店に入った。

青山の書店は洋書も多く写真集なども豊富だ。俺は建築の写真集を手に取り眺めていた。


俺は大学で建築を学んでいた。
自分がいなくなってからも残る建築物にひかれたからだ。将来は設計士になろうと思っている。
建築科は大学も忙しい。
それもあってアイドルの話に二の足を踏んでいた。


好きなデザイナーの写真集を手に取りレジへ向かった。

途中、高い棚の書籍をとろうと必死に手を伸ばしている女性を見かけた。


「取りましょうか?」

僕は女性に声をかけた。

びっくりした女性が振り向く。

綺麗な人だ。

「あ、すみません。
 お願いできますか?」

女性はにっこり笑って僕を見上げた。

上目使いの表情にドキリとした。

僕は女性に被るように書棚に手を伸ばした。

「これですか?」

女性も一緒になって背伸びする。

彼女の髪から柔らかな香りが届いてなぜか緊張する。

「あ、その右隣の

 そう、それです」

僕は棚から彼女の指差す本を抜き取り彼女に渡した。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

彼女は僕を見上げて嬉しそうに微笑んだ。

彼女のすべてにドキリとする。


「背が高くて羨ましいです」

彼女が本を抱えてにっこり笑う。

「こんな風にお役にたつなら背が高いのも悪くないですね」

僕は自分の口から出た言葉に驚いた。

まるで口説いているみたいだ。

「ありがとう。助かりました」

彼女はお辞儀するとレジへ向かった。



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