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世界で一人だけの君へ
第10章  出逢い
「JYOさんがなんでお前に声をかけた?

 既にいろんな世代の人間がお前を知っている。
 しかもそのツラ。
 野球人にするにはもったいない。

 ちょっと背はでかいが、モデルという道だって可能だ。

 うちの事務所にとっても新たなウリが出来るわけだよ。

 あのJYOさんが目をつけたんだ。
 それだけで売れる。
 
 迷う余地はない」


「...」


俺は俯く

「あのな、アイドルをスポーツ紙がスッパ抜くって恋愛ネタ以外あんまりねーぞ。

 それだけでもうちにとっちゃ新たなウリ口なんだよ」


「ですが...この先の人生をかけるほどの確信が持てないんです」


俺は何とか声に出す。


「確信なんてねーよ。
 信じて必死にやるだけだ。

 でもよ、じゃあサラリーマンなら夢の人生が歩めるのか?

 それだって保証はない。
 みんな選んだ道で必死に真剣に闘うからやっていけるんじゃねーの?
 だから成功するんじゃねぇの?」

樹村くんの目は真剣を通り越して怒っているようにも見える。


「...そうですね」


「なんかやりたいことあるのか?」

少し落ち着いた樹村くんが穏やかに聞く


「実は建築の道に進もうかと」


「建築?」

樹村くんの片眉が上がる

俺は怯まず答える。

「ええ。
 自分が死んでからもずっと残る建築物を造ってみたくて、大学で建築を学んでいます」


樹村くんがニヤリと笑う



「坂井、建築を残すのもいいが


 お前自身を残してみないか?」



俺、自身?






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