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第10章 　出逢い

「すみません、お待たせしました」

璃子さんと監督のもとへ走る

監督は憮然とした表情だ

「もうだいぶ日も傾いてきたからチャンスは一回きりだぞ」

「はい。ありがとうございます」

僕は監督に頭を下げて立ち位置へと走った。


少し考えてさらに遠くへ下がった。


「スターート！」


カチンコの音とともに走り出す。

ランニングなんて久しぶりだ。

少し涼しくなってきた風が気持ちいい。


前を歩く一宮くんと彼女。

僕は２、３歩走り過ぎ二人に振り返った。


『あれ？達哉？』

『おっ　賢夢』

僕は彼女に向かって微笑む

一瞬彼女がドキリとした表情を見せる

『かわいい彼女だね。

　今度ゆっくり紹介してよ』

『今度な』

一宮くんがニヤリと笑う。

『じゃあ』

といって手をあげた。

『おう、またな』

僕は二人のもとを走り去った。


『...誰？』

彼女が僕の背中を見つめて聞く

『あいつ？

　坂井賢夢。
　ただの野球バカ』

そういった一宮くんの表情は優しかった。



「カッッッーート！！」