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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
佐伯は淡々として話し続けた。
ーーーー私は,愕然としました。
百合子があの恐ろしい五助とかかわりを持つことになった原因は私です。私は,教師としてあの級を受け持つようになってから幾度か,病気がちで欠席の多い百合子と,学校を休んで使い走りをしていた五助に補習授業をすることがありました。もちろん,他の生徒も含めて五,六人のこともありましたが,この二人だけを対象としたことも数回はありました。

「申し訳ありません。それは当時,担任をしていた私の責任です。欠席日数が多いという点では等しいとはいえ,百合子さんのような清らかなお嬢さんと,あのような不良少年の席を並べて居残りで補習を受けさせたというのは配慮不足でした」と私は謝り,たとえ何があっても百合子さんを姦通の罪に問うようなことはしませんと約束して,私は百合子の実家を後にしました。

それから,私は五助の家を探そうとしましたが,それは困難を極めました。私が受け持ちをしていた当時,五助は祖母の家に住んでいたのですが,そこは借家でどうやらこの祖母の死後は別の人が住んでいるようでした。その後,母の連絡先だということで一応は料理屋ということになっている店の住所を知らされたことがありましたので,まずはそこを訪ねるようとしました。
しかし,なかなかわからず,という以上に,その近辺のあたりはいろいろと料理屋や貸座敷やそのほか得体のしれぬ店が並んでおり,昼間に訪ねるとどの店も雨戸を閉めていて人もあまりいない,仕方がないので夕方に出向くと,旦那だのお兄さんだのと声をかけては連れ込もうとする,そんななかで,人探しをしようとしても至難の業でした。
私は,自分が書いた百合子の肖像画をその町でいろいろな人に見せましたが,
「そんな綺麗な娘なら,うちの店に欲しいよ」とか「そんな上玉なら,こんな掃き溜めではなくて吉原にでもいるんじゃないか」というようなひどい言葉しか返ってきません。
私はあきらめかけていました。
そんなある日,封筒が届きました。
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