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女鑑~おんなかがみ~
第16章 献身
「ああ,けったいな子,どすか。まあ,ちょっと・・・・困っ」
小紫が苦し気に言葉を濁すと,みやこ呉服のご隠居は再び饒舌になった。
「そうやそうや,思い出した。前,お前が席を外したときにな,あの小桃っていうたな,あの娘にちょっとだけ,ちょっかい出したんや。着物の合わせ目から手を入れてな。
そしたら,あのアマ,いきなり儂の顔を平手打ちして,それからキンタマ,思いっきり蹴りやがった」
「・・・・・・」
小紫は,まるで一気に頭から冷や水を浴びせられたような気になり,それまでの悶々とした気持ちも,乳首に残る甘美な痛みも,すべて吹き飛んでしまった。
弟の輝虎といい,やむを得ず妹分ということになっている小桃といい,これではみやこ呉服のご隠居にとって小紫が疫病神のようなものではないか。
「申し訳ございません。そんなことが…。知らぬこととはいえなんとお詫びしていいか」
小紫は飛び起きて,平伏して詫びようとした。
「かまへん,かまへん。儂,実は,ああいう,活きのいいのが好みやねん。
せやから,お前のことも,踊りのおさらいのあと,急に水揚げ,ということにさしてもろたんや。
もうちょっと泣いて暴れるかと期待してたんやけど,さすがに辛抱強いお前はまな板の鯉や。
まあ,それはそれで良かったけどな。
けど,せっかく,水揚げ,っていうねんから,釣り上げられてもずっと跳ねてるような奴な。
この前も,昔,儂のところの呉服屋で小間使いしてた娘ら,みな順番に味見してたころを思い出して楽しかったわ。
うまいこと騙して蔵の床下に連れ込んでな,暴れるのに疲れてどうもこうも動かんようになったところでいただくのが旨いんや。
まあ,叩かれたり蹴られたりするのは困ったもんやけど,まあ,それは適当なところで収まるようになんとかしてやな。
あんたの妹分やろ,今度は・・・どうやろ」
小紫の頭のなかでは,かつてみやこ呉服で小間使いをしていた少女たちへの同情と,元経営者の非道への怒りが確かにあった。しかしこのあきれ果てた武勇伝を聞くうち,奥にある蜜壺からは熱いものが溢れはじめた。
小紫は,この好色で残酷な老人の共犯者になることを決めた。
小紫が苦し気に言葉を濁すと,みやこ呉服のご隠居は再び饒舌になった。
「そうやそうや,思い出した。前,お前が席を外したときにな,あの小桃っていうたな,あの娘にちょっとだけ,ちょっかい出したんや。着物の合わせ目から手を入れてな。
そしたら,あのアマ,いきなり儂の顔を平手打ちして,それからキンタマ,思いっきり蹴りやがった」
「・・・・・・」
小紫は,まるで一気に頭から冷や水を浴びせられたような気になり,それまでの悶々とした気持ちも,乳首に残る甘美な痛みも,すべて吹き飛んでしまった。
弟の輝虎といい,やむを得ず妹分ということになっている小桃といい,これではみやこ呉服のご隠居にとって小紫が疫病神のようなものではないか。
「申し訳ございません。そんなことが…。知らぬこととはいえなんとお詫びしていいか」
小紫は飛び起きて,平伏して詫びようとした。
「かまへん,かまへん。儂,実は,ああいう,活きのいいのが好みやねん。
せやから,お前のことも,踊りのおさらいのあと,急に水揚げ,ということにさしてもろたんや。
もうちょっと泣いて暴れるかと期待してたんやけど,さすがに辛抱強いお前はまな板の鯉や。
まあ,それはそれで良かったけどな。
けど,せっかく,水揚げ,っていうねんから,釣り上げられてもずっと跳ねてるような奴な。
この前も,昔,儂のところの呉服屋で小間使いしてた娘ら,みな順番に味見してたころを思い出して楽しかったわ。
うまいこと騙して蔵の床下に連れ込んでな,暴れるのに疲れてどうもこうも動かんようになったところでいただくのが旨いんや。
まあ,叩かれたり蹴られたりするのは困ったもんやけど,まあ,それは適当なところで収まるようになんとかしてやな。
あんたの妹分やろ,今度は・・・どうやろ」
小紫の頭のなかでは,かつてみやこ呉服で小間使いをしていた少女たちへの同情と,元経営者の非道への怒りが確かにあった。しかしこのあきれ果てた武勇伝を聞くうち,奥にある蜜壺からは熱いものが溢れはじめた。
小紫は,この好色で残酷な老人の共犯者になることを決めた。