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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
「まあ,あのときは百合子も承知の上だったということはわかった。それでも学童が学校でやってよいことではない。悪質な行為であることには変わりがないぞ。
だが,それは十年も前のことだ。
そのあとも付き合っていたのか」と私が聞きますと百合子のほうが口を開きました。

「裁縫女学校のとき,友達と一緒にお汁粉を食べにいった帰り,五年ぶりくらいで五助さんにお会いしたのです。そのころ,私は悲しいことがありました。病気がまた悪くなってお医者に診てもらったところ,嫁入りも子どもを産むのも無理だと言われたのです。裁縫女学校の同級生はみんな,途中で嫁入りが決まって,そのたびに学校をやめて嫁いでいきます。その日も,嫁入りが決まって学校をやめる友達のお別れ会でお汁粉を食べた帰りだったのです。

自分は産めない身体ということなら嫁入りもできない,と思って,取り残されたようで辛かったときに,五助さんに会いました。
私は,五助さんに,小学生のときの続きがしたいと言いました。あのとき,学校の物置で私を縛った五助さんは,本当はこのなかに男のマラを入れるのだ,そうしたら赤子ができる,と教えてくれました。それでようやく,押し入れに隠してあった絵の意味が分かりました。

どうして家の押し入れにあのような絵があったのか,昔に不良の親戚がいたらしいと聞いたことがありますが,わかりません。
あの絵をもっと早く燃やしておけばよかったと言って,父と母が言い争っているのを聞いたことがありますが,だれもいない部屋で一日中寝ていた私には,あの恐ろしい絵が唯一の楽しみでした。そして,五助さんに教えてもらってからは,この絵のようなことをするのが心待ちだったのです。

でも,五助さんは駄目だと言いました。
それは嫁入りしたとき,旦那にしてもらうものだからダメだ。ずっと嫁入りできないようならしてやるからここに来い,といって,この場所を教えてくれました。

だから私は,早く嫁入りしたいと思うようになりました。でも,子どもを産めないとわかっている女を嫁にもらってくれるような人はなかなかおりません。奥様をなくされた人の後妻の口などを父が一生懸命探していたようですが,あきらめていた矢先,大叔父が先生との縁談を紹介してくれました。

だからようやく,待っていたことをしてもらえるのだと楽しみにしていたのに・・・」

私は言葉を失いました。

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