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女鑑~おんなかがみ~
第11章 嗜虐
女将は続けた。
「輝虎は前の大臣のところの千賀子さまとのお話がなくなってからは,縁談すら断り続けているらしいね。前の大臣も気にしておられたよ。まあ,あれも狸だからね」
若槻は笑って答えた。
「残念ながら,家庭を持てるような暮らしはしておりません。女など,その都度買ったほうが面倒がなくてよいというのが私の持論ですのでね。あのあと,千賀子姫の婿になった男とも面識はあるのですが,苦労しているようですよ。茶会だといっては着物を誂え,パーティだといってはドレスを誂え,少し芸者と遊んだと言っては皮肉を言われ・・・」
若槻の答えは,姉である女将にとって予想通りであった。
弟が結婚しない理由が他のところにあるのはわかっていたが,口に出すのはやめた。
「まあ,そう答えるだろうとは思っていたよ。
でも,あの娘を抱きたいとは思っているんだろう。あのような娘が男を知ったらどうなるのか,私も,もし自分が男だったら,あのように気丈な娘の身体を開いてやりたいと思っただろうね。この前,道具を確かめたときにはぞくぞくしたよ」
「姉上・・・・」
若槻は,何かを言いかけたが黙り,胸の奥で合点してうなづいた。
忘れかけていた激情が甦りそうになった。
「あの娘の初めては,お前さんがいいと思うよ。私の弟だということは隠して店においで。まあ,戸籍上は40年近くも前に,姉弟ではなくなっているんだけどね。
その日は,千鳥に店を任せて出かけることにするよ。私の舞妓時代の最初の旦那,みやこ呉服のご隠居の,もう,三十三回忌になるのでね。目立たないように墓参りだけしてくるよ。お前も,姉の私がいるんじゃ,居心地が悪いだろう。」
若槻は「みやこ呉服の・・・」と言いかけてやめた。
「今も墓参りを。それはまあ義理堅いことですな,姉上も。みやこ呉服が三十三回忌ですか。」
「輝虎は前の大臣のところの千賀子さまとのお話がなくなってからは,縁談すら断り続けているらしいね。前の大臣も気にしておられたよ。まあ,あれも狸だからね」
若槻は笑って答えた。
「残念ながら,家庭を持てるような暮らしはしておりません。女など,その都度買ったほうが面倒がなくてよいというのが私の持論ですのでね。あのあと,千賀子姫の婿になった男とも面識はあるのですが,苦労しているようですよ。茶会だといっては着物を誂え,パーティだといってはドレスを誂え,少し芸者と遊んだと言っては皮肉を言われ・・・」
若槻の答えは,姉である女将にとって予想通りであった。
弟が結婚しない理由が他のところにあるのはわかっていたが,口に出すのはやめた。
「まあ,そう答えるだろうとは思っていたよ。
でも,あの娘を抱きたいとは思っているんだろう。あのような娘が男を知ったらどうなるのか,私も,もし自分が男だったら,あのように気丈な娘の身体を開いてやりたいと思っただろうね。この前,道具を確かめたときにはぞくぞくしたよ」
「姉上・・・・」
若槻は,何かを言いかけたが黙り,胸の奥で合点してうなづいた。
忘れかけていた激情が甦りそうになった。
「あの娘の初めては,お前さんがいいと思うよ。私の弟だということは隠して店においで。まあ,戸籍上は40年近くも前に,姉弟ではなくなっているんだけどね。
その日は,千鳥に店を任せて出かけることにするよ。私の舞妓時代の最初の旦那,みやこ呉服のご隠居の,もう,三十三回忌になるのでね。目立たないように墓参りだけしてくるよ。お前も,姉の私がいるんじゃ,居心地が悪いだろう。」
若槻は「みやこ呉服の・・・」と言いかけてやめた。
「今も墓参りを。それはまあ義理堅いことですな,姉上も。みやこ呉服が三十三回忌ですか。」