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女鑑~おんなかがみ~
第11章 嗜虐
若槻輝虎は,ひたすら学問と仕事に打ち込んだ。
高等学校や帝国大学の友人のなかには,小遣いで色町に出入りする者もいたが,当時の若槻にはそのような余裕もなかったし,何よりも,姉が置かれている状況を思えば,そのようなことは考えられなかった。

母上は若槻の帝大在学中に,父上は若槻が高等官として官職を得て間もなく病気でこの世を去った。若槻はせめて父母の葬儀には姉にも帰郷してもらえるようにと考えて書状を送ったが,香典が送られてきただけだった。親類の一部が士族の家の娘が芸妓とは人聞きが悪いから遠慮してくれて助かった,などと話しているのを聞くと何も言えず,一人で父の借金と家産を整理した。借金のほうが多くはあったが,姉の仕送りによってほとんどが返済されていることを知った。

しかし若槻にとって姉は,遠足で出会った十四歳の舞妓姿の記憶で止まっており,思い出そうとすると,美しい姉が涙をこらえながらヒキガエルのような呉服屋に組み敷かれる姿が脳裏をよぎるばかりだった。そしてその忌まわしい残像は,姉への同情や呉服屋への怒りだけでなく,自らの内でたぎる汚れた情欲や衝動と結びついていた。

それから間もなくして輝虎は大臣秘書室に配属され,綾小路大臣の信頼を得て,ガーデン・パーティで大臣の娘の千賀子と出会った。
千賀子は輝虎より八歳年下で,当時十六歳だったが,驚くほど幼く,天真爛漫であどけなかった。姉の久子であれば十二歳のときでさえ,これよりもずっと大人びていたと感じた。
父上にもう少し先見の明があり,姉上をせめて女学校に通わせていたら・・,姉上もあのような悲しみと諦めに満ちた姿ではなく,無邪気な少女のままでいることができたのだろうか。
若槻は眩しすぎるような少女,千賀子姫を見ながら感じた。若槻を婿に考えているのだと大臣からほのめかされたとき,若槻は戸惑いながらも,嗜虐的な妄想を禁じえなかった。
自分がこの清らかな千賀子姫を娶るのだ。ミッション系の女学校に通い,男女のことなど何も知らないであろう千賀子を,自分が蹂躙し,羞恥と痛みに泣かせるのだ。呉服屋のヒキガエルが姉にしたような仕打ちを,自分はこの高貴で清純な少女に対してするのだという残酷な期待を胸に,若槻は拙いピアノ演奏やダンスを誉め,幼すぎるおしゃべりに相槌を打った。
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