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振り向けば…
第2章 俺を呼べや…
「お前ん家はいいよな。おばちゃんは優しいし、オッチャンはおもろいし…。」
渋々とながら悠真が私の宿題を写す。
悠真は悠真で私の家が羨ましいとか言う。
悠真のお父さんは2度と帰って来ないから…。
お互いがお互いを羨ましいと感じる妙な関係。
その関係に慣れた頃、やっとお父さんが帰って来る。
「もう切れ痔は治ったんか?」
当時の私は癌とは聞かされておらず、お父さんが
「うんこが血塗れになりやがる。多分、切れ痔やから病院に行って来るわ。」
と言うた言葉を鵜呑みにしてた。
「おうっ!もう綺麗なうんこになったんやぞ。」
下品なお父さんにお母さんが顔を顰める。
それでも私はお父さんが好き。
「ちょっと、タバコは辞めなあかんやろ?」
お母さんがお父さんを叱る。
「これだけは辞められへん。」
タバコを咥えるお父さんの足元が私の指定席。
「来夢、コンビニに行くか?タバコ買いに行くからオヤツ買うたるわ。」
「もうすぐに晩ご飯やから今から来夢にオヤツとか与えんとってっ!」
せっかくお父さんが帰って来たのにお母さんがガミガミと言う。
悠真がうちのお母さんが優しいとか言う意味がわからない。
お父さんが居るというだけで我が家は10倍は賑やかになる。
だから私はお父さんが好き。
お父さんが居れば怖いもの無しになる。
退院したばかりのお父さんが仕事に行く。
「休んだ方が…。」
おじいちゃんが心配する。
「これ以上、身体が鈍ると嫌なんや。」
かなりお父さんが痩せていた。
元々がそんなに太い人じゃなかったけど、ガッチリとした身体だった。