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振り向けば…
第10章 映画にでも…
奥手の拓也さんが私に向かって1歩前に進んで来る。
私は拓也さんに寄り添うと決めた。
「拓也さんの家に行きます。」
ずっと拓也さんと2人で手を繋いでた。
私のお弁当で皆んなのお腹が満足すると、運動の為に海に入ろうと言うては次々と沖にある休憩用イカダに向かって泳ぎ出す。
私は泳げない。
遠浅の日本海…。
今は引き潮でイカダまでは大した距離じゃない。
「ほら、行こうよ。」
私の手をずっと握ったままの拓也さんが私の手を引っ張った。
「がぼっ…。」
いきなり足が付かなくなる。
思いっきり海水を飲んで息が出来なくなる。
ただ怖くてもがいた。
ヒョイと私の肩から上が海面の上に出た。
「ゲボッ…、ゲホッ…、ウェッ…。」
何度も咳き込む私の背中をさする人がいる。
まるで子供のように私を抱き上げる悠真が居た。
「こいつ、足がつかない場所は泳げねぇよ。」
低く威圧するような声で悠真が拓也さんに言う。
「元水泳部だって聞いてたから…。」
慌てた拓也さんが日下先輩の顔を見る。
「章…、来夢が泳げないって知ってたの?」
日下先輩に確認をしながら玲奈さんが私の背中をさすってくれる。
「ああ、ぐっさんからは聞いてたし…。」
日下先輩とは前にプールに行った事がある。
ただ、その話題は溝口先輩に繋がるからタブーのようになってた。
私を抱っこしたまま悠真が海から連れ出してくれる。
怖かっただけだ。
後は口の中が塩っ辛くてヒリヒリする。
だから悠真にしがみついてまう。
「ミネラルウォーター買うて来て貰えますか?」
悠真が自分の財布をまるごと玲奈さんに渡す。
「僕が買って来ます。」
拓也さんが水を買いに走ってくれる。