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振り向けば…
第15章 今日だけやで…
子供を堕ろす…。
高校生の時は噂話程度しか聞いた事がない。
しかも他の学校の噂話だから、自分達には関係ないという感覚しか持ち合わせてなかった。
大学に行くと、そんな事は馬鹿な女がやる事だと見下す考えの人が多く、やっぱり自分達には関係ないと言うだけになる。
実際に自分の目の前でその行為が行われる。
人1人の生命を奪う行為に私の身体が硬直する。
もしかすると美保は逃げ出すかもしれない。
当事者でない私ですら逃げたい気分になるから思わず悠真に縋り付く。
「来夢なら大丈夫…、なんかあればすぐに駆け付けてやるから…。」
そうやって悠真は私だけを甘やかす。
美保には冷たいのに…。
いや…、美保の為にこそ悠真は既に多大な犠牲を払うてる。
お金を出してあげて手術の同意書には自分が父親だと悠真が名乗ってる。
人1人の生命を消すのは自分なのだと悠真は自分から堂々と名乗りを上げたのだ。
その悠真の気持ちを無駄には出来ない。
だから私がしっかりしなければと考える。
「終わったら連絡する。」
そない言うて悠真の家を出る頃には、すっかり日付けが変わってた。
翌朝、美保を車で迎えに行く。
ニコニコと笑顔を作る美保のお母さんから
「来夢ちゃん、久しぶりね。立派な会社に就職したんでしょ?美保にも就職するという意味を教えてちょうだいね。」
とか言われて苦笑いをしてまう。
私と美保以外の誰もがただの女子会だと思うてる。
「もう、お母さん、ええよ。いってきます。」
何も知らないお母さんとは対象的に苛立ちを見せる美保…。
病院までは無言のまま…。
少し街から離れた古びた産婦人科を選んだ。