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振り向けば…
第15章 今日だけやで…
キッチンの流し台だけで工事代金の3分の1はかかるという高級キッチン…。
「これは…、支給ですよね?」
家具などは施主の支給で工事代金に含まれない。
こんなキッチンを含まれたら、うちの会社は大赤字…。
モデルルームとはいえ、本物のユニットバスやトイレの便器、ドアや窓サッシなどを入れるのだから予算が全然合わなくなる。
「えー?支給?それは施主に聞いてよね?」
自分が好き勝手な要求をするくせに後の事は知りませんというデザイナー…。
「一応、話し合います。」
ひとまず、私はそう答える。
施主の答えはNOだった。
似たようなキッチンを探せという施主…。
ドイツ製やで!?
不可能に決まってるやろ!?
キレた私に施主が折れた。
キッチンはかろうじて支給になる。
不動産会社の担当者は
「モデルルームだけで赤字になりそうや。」
と不安な顔を私に向ける。
なのに…。
モデルルームの建築が半分まで出来た時…。
残り工期は一週間…。
デザイナーがやって来る。
「ここの和室なんだけどね。畳の色を紫にしたいんだよ。出来れば青と紫のツートーンって感じね。」
こいつの言葉に固まった。
カラー畳を今から発注か!?
間に合う訳がない…。
「無理?間に合わない?」
「間に合いません。」
「えーっ?せっかく思い付いたのに…。」
思い付きを現場に持ち込むな!
再び、施主の担当者と話をする。
「デザイナーの言葉は無視して下さい。カラーはオプションという事にします。」
泣きそうな顔の担当者…。
そして、キレッキレの私はそのまま悠真とご飯を食べる羽目になる。