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振り向けば…
第17章 遠い過去…
会社帰りに日下先輩達の結婚式用のドレスを買いに行った。
淡いエメラルドグリーンでAラインのワンピースドレス…。
ベルトラインのリボンと合わせて剥き出しになる首周りにリボンのチョーカーを付けるデザイン。
夏の結婚式に相応しいドレスをサイズのお陰で半額で買えたからと満足する。
売れ残りのSサイズ…。
小さな私にはぴったりだ。
ドレスを一度、自分の家に帰ってからタンスの中に仕舞い込む。
もう一度、家を出ようとすると
「また、悠真君のとこか?」
とお母さんが聞いて来る。
「うん…。」
「付き合うてる訳じゃないよね?」
「違うよ。」
「だったら、少しは控えや。あっという間に近所中で通い妻の噂になるで…。」
まさかの嫌味だった。
「それが、あかんの?」
「来人が恥ずかしい思いするやろ?」
お母さんが言いたい事がわかるとイライラとする。
今や我が家の自慢の子は私ではなく弟の来人。
私や悠真を馬鹿にしたように冷めた目で見る来人は医学部の1年生。
「姉ちゃんは所詮は女やからな。適当な大学でも充分やろうけど、俺はそうはいかんからな。」
と言うて私立ではあるが医大へと進んだ。
だって、来人はずっと塾に行ったやん。
来人の高校は私立の有名進学校やったやん。
来人は大学受験専門みたいな高校で勉強だけすればええという環境が完璧に整ってたやん。
本来なら私に入るはずのアパートや駐車場の賃料は全てを来人に注がれる事にまでなった。
医大は6年も大学に通う上に私立だから通常の倍の学費が必要になる。
お父さんが不安定だった時とは違いお母さんは来人の時は来人の受験に必要なものを全て与えたのだ。