この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第17章 遠い過去…
そんなお母さんに腹が立つ。
嫌いな訳じゃない。
だけど積もりに積もったものがある。
お父さんの初めての手術は来人がまだ赤ちゃんだからと何でも私には1人でやらせたよね?
中学の受験時期でも私には塾にも行かさずに来人の為にとご飯を作らせたよね?
私の大学受験には自分で出来るでしょと夜食なんか作ってくれへんかったのに、お母さんがインフルエンザだからと来人の夜食を私に作らせたよね?
そんな私には悠真がいつだって付き添ってくれた。
今更、来人が恥ずかしい思いをするからと悠真とは距離をおけと言うお母さんが信じられないと思う。
そもそも、始めにこの家の鍵を悠真に渡したのはお母さんだった。
それも、やはり来人の為だった。
「だったらアパートの権利を私に返してくれる?私がこの家を出て行くから。この家はもう来人のものなんだし、そうすれば来人も恥ずかしくないでしょ。」
吐き捨てるように言うてた。
冷たい子の冷めた言葉。
お母さんが目を見開く。
私に怯えた顔をしてる。
それはそうだ。
アパートの権利のお金が無ければ来人の学費はとてもじゃないが払えない。
私の時の倍の学費…。
おじいちゃんが遺してくれた最後の遺産。
お父さんに万が一があっても私と来人が守られる為の遺産だとわかってるから来人の学費に家賃収入が充てられる事になっても私は反対をしなかった。
私だって、もう社会人で自分で食べて行けるお給料を貰ろうてる。
ただお母さんが今更、私から悠真を引き離そうとするのが嫌だっただけの売り言葉に買い言葉だ。
「来夢…。」
心配そうに私を見るお母さん…。
「いってきます…。」
冷たく言うて家を出た。