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振り向けば…
第17章 遠い過去…
拓也さんと2人でタクシーに乗る。
向かった先は大学の近くの商店街。
拓也さんが住んでたマンションのすぐ傍にある小さな商店街…。
そこから道1本逸れた裏路地へと拓也さんが私を案内する。
「あのマンションは?」
「今も住んでます。僕はまだまだ、しがない弁護士の卵だからね。」
贅沢や派手な事を嫌う人だった。
学生時代から住んでるマンションに今も居る。
「このお店…。」
小さな小さな喫茶店の様なお店。
一応はイタリアンレストラン。
昼間は学生の為にと手作りピザにサラダとジュースを付けたランチがリーズナブルなお値段で食べられると噂になってたお店。
夜は大人のディナーコースしか出さないお店だから学生には手が出せないというレストラン。
学生達にはある種の憧れを持つお店だった。
社会人になったら食べに来たいと…。
「来夢と…、一度は来たかったんです。」
あの頃の拓也さんは実家の仕送りだけだから、こんなお店には来れる人じゃなかった。
今もまだまだ見習い中でお給料は安いらしいけれども私をレストランに連れて来るくらいは出来ると言う。
食事が始まると拓也さんが静かに話をする。
「僕が…、本当に悪かったと思ってる。」
切ない顔で私を見る拓也さんに泣きたくなる。
違う…。
私が悪かったから…。
支えてあげるべきだった。
司法試験を乗り越える為に拓也さんにもっとしてあげられる事はたくさんあったのに…。
私は悠真を意識し過ぎた。
悠真の事なんか放っとても前に進める人だとわかってたのに…。
悠真に対する家族意識が強すぎた。
それが拓也さんを傷つけた。