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振り向けば…
第18章 私自身を…
悠真が私の隣りに座り私の頭を子供にするように撫でて来る。
「来夢は人生に焦り過ぎやねん。」
「今は焦ってないよ。」
お父さんが不安定な時は私がしっかりしなければと確かに焦ってた時期がある。
「今も焦っとる。早く会社で一人前になろうとか考えたりしてるやろ?」
「それがあかんの?」
「ただでさえ来夢は短気やからな。」
いつものように悠真がニヤニヤと笑い出す。
「短気で悪かったな…。」
膨れっ面しか出来ない私。
悠真は大人で私が子供。
「これは何やと思う?」
悠真がテーブルにあったテレビのリモコンを手に握って聞いて来る。
馬鹿にしてるんか?
「テレビのリモコンやん。」
「確かにテレビのリモコンや。けど、テレビを見た事ない人には、これをどうやって伝える。」
「テレビをつける為のもの?」
「色は?形は?手触りは?」
「えっと…、黒くて固くて4角?」
「その説明ではこのブルーレイのリモコンとは区別が付くか?」
悠真がもう1つのリモコンを指差した。
「付くわけないやん。」
「それが短気や言うんや。1つのものを掘り下げてとことん考えるって事をしてたら1日なんかあっちゅう間に終わってまうから時間なんか全然足りへんぞ。」
クリエイターという仕事をする悠真は1つの事をとことん掘り下げて考えるのが仕事だ。
時間が足りないから〆切に追われる。
「1度自分を掘り下げてみろ。」
「どうやって?」
「なんでも構わへん。」
悠真が私の頭をくしゃくしゃと撫でて笑った。
「お前が生まれた日、お前が見て来たもの、お前が感じた事…、そういうのを記録してみりゃ暇つぶしにはなるってだけだ。」
懐かしそうに私を見る悠真には何が見えてるのかが不思議だった。