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振り向けば…
第19章 ここまでだな…
またしてもマンションの郵便物がポストに溜まってるとゾッとする。
今日は飲茶の食べ放題に連れてってくれる約束。
「また〆切か…?」
一応は静かに悠真の家へと上がり込む。
「ゆう…。」
家の中が真っ暗だ。
その暗闇のリビングのソファーに悠真が仰向けになり寝転がってる。
「電気も付けんと…、仕事は終わったんか?」
そう聞きながら悠真の足の上に座る。
私の体重くらいじゃ、屁とも思わない男…。
「なぁ…、来夢。俺…、仕事を辞めよかな?」
悠真がぼんやりとした顔でそう言い出す。
「はぁ?」
意味がわからん。
「なんかあったんか?」
「なんもない…、てか…、なんも思いつかん。すっからかんの気分や。」
要するにスランプとかいうやつだ。
ため息が出る。
資格も手に職も持たない悠真が普通のサラリーマンなんぞ出来る訳が無い。
訳のわからん才能とやらでここまで来た人間が今更に普通の仕事をするとか間違ってる。
マンションはある。
5年くらいは遊んでても生活が出来るとか悠真が乾いた笑い声で言う。
「なら、5年後はどうする気やねん?」
「お前、嫌な事を聞くな…。」
「やかましい!甘えんな。」
「俺かて必死なんや!」
膨れっ面になる悠真。
こういう時は6歳のまま…。
「オカンの為に必死やった時はなんぼでもこの仕事が出来てん。」
悠真が完全にいじけてる。
大学で建築を選んだのも悠真のお母さんから、うちのお父さんに少しは恩返せと言われたからだ。
建築には向いていない悠真は結局、今の仕事をやると決めて自分の会社を作った。
社員も居ない悠真の才能だけの会社。