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振り向けば…
第19章 ここまでだな…
10月…。
悠真と2人で大阪市内へと向かう。
今日は海斗さんの試合の日…。
朝から悠真は不機嫌だ。
「格闘が観たかったなら…、もっと凄い試合のチケットを俺が買うてやるのに…。」
どうやら私が買うたチケットというのが気に入らないらしい。
「別に格闘が観たかったんじゃないよ。知り合いが試合に出てるから行くんや。そんなに悠真が嫌ならお父さんと行くつもりやったし。」
「アホか…、行かへんとは言うてないやんけ。」
ただ不機嫌なだけの悠真…。
私の車を運転しながらブツブツと文句を言う。
「この辺にアリーナなんかあったか?」
「さぁ?ナビはこっちて言うとるやん。」
お父さんと観に行ったボクシングの世界タイトルは旧府立体育館だった。
プロレスなどの巡業も行われる体育館だから、てっきりそこだと思いきや、チケットには違うアリーナだと書いてある。
「知り合いなら、場所くらい聞いとけよ。」
「だから、ナビがあるでしょ?」
不機嫌な悠真と出掛けると、なんだか面倒だなとか考えてまう。
今日に限ってなんで、こんなに不機嫌やねん?
いや…。
大学での集団デートをした時の悠真はいつも不機嫌だった事を思い出す。
拓也さんが居たから…。
あれから拓也さんとは時々、メッセージのやり取りをしてる。
たまたま拓也さんの仕事に建築の知識が必要になったとかで私に質問のメッセージを拓也さんがくれたのがきっかけ…。
最後は必ず
『近いうちに食事にでも行きましょう。』
というメッセージをくれる拓也さんに迷うてまう。
ただ質問に対して私が答えるから、お礼としての食事なのか?
それとも…?
そんな小さな悩みから返事は
『また、よろしくお願いします。』
と曖昧な答えで誤魔化し続ける。