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振り向けば…
第20章 久しぶりに…



「でも、それは…、来夢を犠牲にしたのだと僕は後悔しています。もっと来夢にしてあげられる事があったのじゃないかと思うんです。」

「そんな事はないですよ。あの頃は私だって建設に必死でした。今も建設の事で頭がいっぱいでせっかくの綺麗な紅葉なのに素直に感動出来ません。」

「今の僕も同じです。まだ自分が弁護士として余裕がなくて、また来夢に何もしてあげられないかと不安になりそうです。」


それでも私の為に努力したいと拓也さんが言う。

私はそんな風に考えてくれる拓也さんに何も答える事が出来なかった。

人恋しいくせに…。

人に甘える事が苦手になってる。

いつからだろう…?

内弁慶だから?

彼氏という存在にまで本当の自分を隠してまう。

拓也さんとやり直すなら本当の私を見せなければいけないと思う年頃になった。

生半可な気持ちでお付き合いをする年齢じゃない。

拓也さんが連れてってくれた湯豆腐屋さんは本当に美味しいお店だった。

しかも、ちょっと高級な料理店…。

一限では入りにくいオーラと威厳を放つお店に尻込みしたくなる。


「大丈夫です。」


拓也さんが私をエスコートしてくれる。

美しい中庭が見えるお座敷に通されて湯豆腐のコース料理を堪能する。


「ここのお庭が僕の一番好きな京都での紅葉のスポットなんです。」


照れたように笑う拓也さんにドキドキとした。

学生時代と変わらない笑顔。

私が大好きだった笑顔。

この笑顔の為に必死に背伸びをした自分を思い出す。

今の私はもう背伸びをせずに拓也さんと居られる?

穏やかな時間だけが流れていた。

長い1日…。

それでも、穏やかでゆっくりと流れる時間を感じながら、時には長い1日でも良いのかもしれないと思う私が居た。


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