この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第23章 雨や…
5月になり連休になる。
今年は悠真とお父さんが居る熊本に行こうと話合う。
だけど…。
『来んな。お父さんもすぐに帰る。』
とお父さんに言われた。
「悠真…。」
「オッチャンにはオッチャンの考えがあるんやろ。」
悠真が私の頭を撫でて来る。
ホームシアターのスクリーンに映るテレビでは熊本地震の募金のお知らせが出てる。
熊本はまだ助けを求めてるのに…。
お父さんが見捨てて帰って来ると言う。
そりゃ、お父さんには家に居て欲しい。
でもいつも誰かの人助けをするお父さんが私の自慢で誇りだと思う。
「淡路にでも行こか?」
悠真が連休は私を淡路島に連れて行くと言う。
連休中は神戸や淡路島にある阪神大震災の資料館や記念館を見て回る。
私にはほとんど記憶がない震災。
やはり悠真も奈良に居て、その頃はほとんど記憶がないと言う。
「けど、この地震があったからこそ、今は避難所とかの救済が進んだのは事実やろ?」
「それは贅沢な事なんか?」
「阪神大震災や東日本大震災を体験した人からすれば、そう感じるってだけや。」
私にはわからない。
「例えばの話。普段はラーメンなんか贅沢なもんとちゃうやろ?けど、阪神大震災の時はラーメン1杯が贅沢やと感じる人が多かった。」
「うん…。」
「今、熊本の人はラーメンくらいはちゃんと食える状況やろ?」
「うん…。」
テレビで熊本のピザ屋さんが震災中やからこそ営業をするのだと言うてた。
「要するに状況の違いは飲み水に困ってないって部分や。もし熊本の人が飲み水にすら困ってたら風呂に入りたいなんか誰も言わへんかったはずや。」
「でも飲み水があるから助ける気持ちを失くすって言うのは別の問題やろ?」
私よりも頭の良い悠真に答えを求めてまう。