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振り向けば…
第23章 雨や…
「なぁ…、来夢。焦んなや。兵庫かてほんまの復興には10年以上かかってる。福島かて未だに完全な復興はしてないんや。熊本もゆっくりしか復興はせんよ。」
「けど…。」
時間が経てば風化してしまう。
それを忘れない為の資料館や記念館のはずや。
困ってる人が居る。
助けてあげたいのに何も出来ない自分を感じる。
悠真が言う通りに焦る私が居る。
「今は贅沢しようぜ。万が一、大阪が被災したら贅沢なんか出来なくなるんやから。」
悠真がそう言うて旅館に向かう。
夕食はビュッフェスタイル。
山のように積まれたカニやエビ…。
ローストビーフに天ぷら、お寿司。
これが本当の贅沢だ。
被災地で被災者がお風呂に入りたいと言うたのは贅沢なんかじゃないはずだ。
夕食の後にゆったりとした大浴場で温泉に入りながらそう思う。
お風呂から出ると悠真が私を待っててくれる。
「アイスでも食うか?」
「半分だけ食べたい。」
「なら来夢が食えるだけ食うたら残りは俺が食うたる。」
そう言うてアイスを2人で半分っこする。
「ゆう…。」
悠真の布団に潜り込む。
「寒くないか?」
相変わらずの悠真が私を甘やかすように聞いて来る。
私が寝付くまで頭を撫でてくれる。
これが本当の贅沢。
ただ私を甘やかすだけの悠真と過ごす連休…。
悠真が居てくれるから、ゆっくりと眠れる自分が居る。
もし、震災で悠真とはぐれたらどうしよう?
私は悠真を探しに行くのだろうか?
悠真は私を探してくれるのだろうか?
子供の頃と違い、すっかり悠真に甘える癖がついた。
悠真とは恋人じゃない。
だから悠真を失うかもしれない恐怖から、いつも目を背けてた。