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振り向けば…
第23章 雨や…
今の肉屋は工業高校を出て鉄工所に勤めてるらしい。
「正直、社会に出てからの方が勉強が辛いよな。」
そんな事を言うようになった肉屋が知らない人に見えてまう。
「航大は一浪して3流大学に行ったけど、3流でも俺も行っとけば良かったわ。」
「航大はやっぱり親の会社に就職か?」
「あいつを雇う会社はそこしかないやろ?」
悠真と肉屋がゲラゲラと笑う。
「今度、同窓会でもしようや。」
肉屋がそんな事を言い出した。
「幹事は誰やった?」
「木村さんやろ?」
「ほな、横綱には俺から連絡しとくわ。同窓会で凄いもんが見れるで。」
肉屋が勿体付けて言う。
「凄いもん?」
「俺はずっと商店街やからな。大概の奴の今の姿を見てるんや。お前らみたいに久しぶりに会うたら誰かわからん奴とか居るぞ。」
お前も充分にわからんかったよ…。
肉屋…。
肉屋の看板が無ければ、街で声を掛けられても私にはわからなかったと思う。
「また来てや。」
如何にも肉屋らしい言葉を言われて、その肉屋さんを離れてた。
「あれが早川君…。」
「ああ、あいつも随分変わったよな。」
悠真がクスクスと笑いやがる。
「なんやねん?」
「お前は全く変わってないからな。」
馬鹿にしたように私の頭を撫でて来る。
「やかましい!」
「ごめん、ごめん。」
「知らん!」
「許せ!」
いつものように悠真とじゃれ合いながら歩く商店街。
どこか懐かしいと感じるぼんやりとした夕焼け…。
古びた商店街…。
子供の頃から何度も悠真と歩いた道。
この先はいつまで一緒に歩けるのだろうか?
そんな不安と寂しさを感じる夕焼けだった。