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振り向けば…
第24章 坊やだからさ…
あっという間に夏が来る。
「大阪でライブがある。」
悠真がそう言うてチケットを私に見せて来る。
8月の終わり、ライブと言うてもフェスだから出番は少ないが私の好きなバンドが出る。
「行くやろ?」
「当たり前やん。」
私の即答に悠真がニンマリと笑う。
学生時代の感覚が蘇る生の演奏が聴ける。
それだけで子供みたいにワクワクとする自分が居る。
「やばい、ライブ用に服を買いに行こう。」
仕事が作業服だからと最近は作業服を売ってる様なブティックにしか行ってない。
鉄板入りの安全靴、分厚い靴下に作業服の下に着る為の汗の吸水性と速乾性の高いTシャツが今の私のファッションだ。
「ライブに行くならお洒落する気になるんか?」
悠真がクスクスと笑いやがる。
「なら、ライブに作業服で行こうか?」
「俺が買うたるから、作業服だけは止めて下さい。」
そんな悠真と買い物に出掛けたりする。
ライブの前のお盆休みは悠真と鹿児島に行く予定になってる。
「旅行用の服は?」
「欲しいです。」
「OK、お姫様。靴とバッグもやろ?」
悠真は相変わらず私の為の買い物を惜しまない。
普通のサラリーマンの3倍は稼いでると聞いたけど自分の物はほとんど買わずにいつも私の物ばかりを買いたがる。
たまたま通りがかったメンズのお店にちょっと感じのいいサマーセーターを見つけた。
「悠真…。」
「メンズやぞ?」
「悠真に買うたる。」
「来夢が?」
「私だって社会人で自分で稼いでるもん。」
「なら、買うてくれ。」
たったそれだけで悠真が嬉しそうに笑ってくれる。