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振り向けば…
第32章 その弁当が…



ひたすら情けない顔で私を見る岩谷さん。


「少しでも、困ってる事があれば言うて下さいね。」


残業とか辛い時は私が代わるつもりで言うてた。

突貫の現場だと岩谷さんは唯ちゃんのところに帰れなくなる。


「別に残業とかは大丈夫なんです。うちの母さんが唯を見てますし、唯も仕事だからと理解はしてくれてるんです。」


頭を掻きながら岩谷さんが話をする。


「すみません、若い女性だから聞きますが、森本さんは…、お弁当ってやはり可愛い方が好きですか?」


いきなり妙な質問を受けた。


「お弁当ですか?可愛い?」

「キャラ弁ってわかりますか?」

「そりゃ、まぁ…。」


お弁当箱を開けるとキャラクターの形をしたおにぎりや卵焼きが入ってるお弁当。

保育園の唯ちゃんは基本は給食だけども月に一度だけお弁当の日があるらしい。


「その弁当が…、その可愛くないらしいんです。」


岩谷さんがまた情けない顔で私を見る。

岩谷さんのお母さんはキャラ弁なんか知らない人。

岩谷さんも可愛いお弁当なんか作れない人。

だから唯ちゃんが保育園のお弁当の日が嫌いだと言う時があると岩谷さんが言う。

思わず笑ってた。

建築の仕事には尻込みをする岩谷さんが唯ちゃんのお弁当には必死なんだと感じる。


「連休が明けたら動物園に行きませんか?」


岩谷さんというよりも唯ちゃんを誘ってた。


「動物園ですか?」

「唯ちゃんが主役です。」

「うちは構いませんが…。」

「なら、その時にキャラ弁を教えます。」


それだけを言うて岩谷さんと別れてた。

誰かにお弁当を作るのは久しぶりだと思う。

次の連休ではお弁当を持って悠真とどこかに出掛けたいとか考えながら、早く連休になって欲しいと思う連休の中日だった。


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