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振り向けば…
第32章 その弁当が…



「僕とはやっていけないとだけ言うと妻は出て行きました。」


情けない顔をする岩谷さんが居た。

だから唯ちゃんの為にゼネコンを辞めた。

一年間は資格を取る為に無職だったと言う。


「だけど僕の頭じゃ、国家試験には落ちました。」


唯ちゃんを育てる為には再び就職する必要があるからと知り合いからうちの会社の社長さんを紹介されて入って来たらしい。


「なら、普段の唯ちゃんは保育園ですか?」

「ええ、それと僕の母が面倒を見てくれてます。」


奥さんには既に彼氏が居る。

岩谷さんと離婚する前から付き合ってた彼氏だと岩谷さんが笑う。


「僕が不甲斐ない男だから…。」


そう言うて情けない顔をする岩谷さんを本当に不甲斐ないと思う。


「だったら、唯ちゃんの為にしっかりして下さい。」


偉そうに岩谷さんにお説教をしてた。


「森本さん…。」


岩谷さんが驚いた顔をする。


「今の唯ちゃんには岩谷さんしか頼る人が居ないんですよ?岩谷さんだって唯ちゃんの為に転職したんですよね?」

「そうです。」

「しかも建築ですよ?一般企業とは違うんです。命の危険だってある仕事です。中途半端な気持ちで就職したのなら、明日にでも営業部に配属して欲しいと社長さんに言うべきですよ。」


お父さんが居なくなるかもと必死になって建築の道だけに進んだ自分と唯ちゃんを重ねてまう。

唯ちゃんには夢を持って自分の未来に進んで欲しいと勝手に願う私が居る。


「すみません、すみません。」


岩谷さんの平謝り。

どうも私は平謝りをする人間に弱いらしい。


「私や宮崎さんも協力しますから、岩谷さんが本当に仕事をする気持ちがあるなら、しっかりと勉強をやり直してやって行きましょうよ。」


そう言うてこの話を締めくくる。


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