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振り向けば…
第36章 ええ男やのに…



誰かが私の頭を撫でてる。

背中から悠真の声がする。

ゆっくりと振り向けば…。

私のベッドにトランクス姿だけで腰掛ける悠真の背中が見えて来る。


「あんな、社長さん。たかがテレビの音とか言うけど、森本の家主をしとるんは今はじいさんじゃなくて孫娘やぞ?毎晩毎晩、あんなはしたない音声を聞かされたら堪らんやろ?」


悠真が不動産屋さんに電話をしてる。

今は何時だろう?

ぼんやりと考える。


「ほな、頼むで社長さん。」


そない言うて電話を切る。


「よう寝れたか?」


私の頭をずっと撫でたまま悠真が聞いて来る。


「うん…、今、何時?」

「もう11時や。昼飯でも食いに行こうや。」


私の背中にパジャマを羽織らせてくれる。


「起きたならシャワーをして来い。」


今日はご機嫌な悠真だと感じる。


「うん…。」


シャワーを浴びて着替えをして悠真とファミレスにご飯を食べに行く。


「不動産屋の方からテレビのボリュームは注意を出してくれるんやと。」


そんな話を悠真とする。


「そうなん?」

「来夢の部屋の隣は高齢の女性らしい。だから上の階の男やと社長が言うてた。」

「下の人じゃないの?」


私の部屋は3階の角部屋。


「下は天井分の空間があるやろ?壁伝いに伝わって来てんのなら、間違いなく上の階。お前、建築屋のくせに音の伝わり方を忘れたんか?」


悠真が呆れた顔をする。


「そんなん習ったっけ?」

「お前も結構、ええ加減に授業を受けてたんやな。」

「悠真ほどじゃありません。」


ご機嫌の悠真はよく喋る。

まるで夕べは何もなかったかのようにいつもの調子で話をして2人で笑う。


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