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振り向けば…
第36章 ええ男やのに…
「医者としては3時間睡眠の体質をわざわざ手に入れるとか、はっきり言うてお勧めはせんけどな。あんな睡眠は若いから出来るってだけで、いつかは自分の身体を壊すだけや。」
「医者としてって、お前…、まだ卵やん?」
「それでも姉ちゃんよりかは専門家や。」
それは事実です。
「悠真は…、その不眠症は治されへんのか?」
「あちこちの医者には診てもらったらしいけど…、治すのは無理みたいやな。」
悠真が病気…。
自分のお父さんを失い、お母さんだけでは生活が出来ずに施設に入れられるかもしれない不安から悠真は眠れない子になったのだろう。
だから、うちのお父さんが引き取った。
おばちゃんと安心して暮らせれば小さな悠真の不眠症が治ると思うてた。
そのお父さんが何度も癌で入院をしたから悠真の不安は消えないまま眠れない体質になってしもうた。
「だからな、姉ちゃんが悠真を好きなら悠真と居る事を家族としては反対をするつもりはないねん。だけど家族としての意識だけなら悠真は姉ちゃんの手に負える相手やないと父さんも母さんも心配しとる。姉ちゃんかて、そろそろええ歳なんやから父さん達の心配する意味がわかるやろ?」
まさかの弟のお説教だった。
「悠真が悪いとは思わんよ。だけど悠真の為に危険な一人暮らしを続けるんかを俺が確認に来たんや。」
来人の言葉に息が詰まる。
悠真の為に…。
違う。
だって悠真は私の恋人じゃないから…。
自分の為の一人暮らしなんだと何度も自分に言い聞かせる。
そんな私に来人が更なる追い討ちをかけて来る。
「後な、悠真には感情がないんや。」
来人の言葉に私の時間が止まる。
「感情って…。」
人を愛せないと言うてた悠真。
誰もが悠真を冷たいと言うては怯えたりする事実が私の頭に過ぎる。
悠真には…。
感情がない?
来人の言葉を全く理解が出来ない私はひたすらパニックになるしかなかった。