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振り向けば…
第37章 怖いよ…
ぼんやりとしてベッドの上で経たり込んで座ったままの私を来人が見下ろしてた。
「そういう事やから帰るわ。」
来人は冷静なまま帰って行く。
私だけが冷静になれない。
悠真が不眠症…。
龍平おじさんを亡くして傷付いた悠真を私は更に追い討ちをかけて傷付けてた記憶が蘇る。
自分のお父さんに甘えてベタベタとして悠真にこの人は私のお父さんなんだと見せつけた私。
そのお父さんの生命の覚悟を病院や家族から言われては何度も諦めた姿を悠真に見せて来た私。
悠真はそんな私に何度傷付いて来たのだろう?
悠真の不眠症が治らなかったのはもしかすると私のせいかもしれない。
きっと、その不眠症のせいで悠真の感情が無くなってしもうたと思うと泣きたくなる。
来人は不眠症と感情の関係は医学的にはわからないと言うてたけど、眠らない悠真の脳は感情を司る部分の活動が鈍くなってる可能性はあると言う。
悠真には感情がない。
私が見る限り、そんな風に感じた事はない。
でも思い当たる節はいくらでもある。
来人は例え話として私に
「よく他人はジャガイモやピーマンやと思えって例え話があるやろ?悠真にはほんまに他人がジャガイモやピーマンにしか見えてないねん。」
と言うた。
他人を思いやるという感情を悠真は全く理解が出来ないのだと来人が言う。
「悠真は知識だけで困った人を助けるのは当たり前だと考えとる。だけど実際の悠真の感情では他人は自分とは関係のないどうでもいい存在にしか感じる事が出来ないんや。」
来人の説明に納得する。
街で委員長に会うても俺には関係がないと言い切った悠真を思い出す。
悠真を利用しようとした美保を毛虫のような目で見てた悠真を思い出す。
私に対しては…。
感情なんか何もなかったのかもしれないと考える。
ただエロいからパイパンにしただけ…。
ただ性欲が溜まってるから私を抱いただけ…。
私を愛する気持ちは悠真の中に育たない。