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振り向けば…
第1章 アホの子…
お父さんが私に困った顔を向けて来る。
「悠真ん家に行くんは嫌か?」
お父さんの前ではいい子で居たい私…。
「そうやないけど…。」
なんでもお父さんに言いつけるお母さんが嫌いだと思う。
お母さんはまだ小さな弟ばかりを可愛がる。
「あんな…、龍平の事を覚えてるか?」
お父さんが私の顔を覗き込む。
あやふやにしか覚えていない。
ただ龍平おじさんはお父さんの親友だった人。
去年の秋に現場の事故で亡くなった。
その時、お父さんが小さな私にしがみついて、うわんうわんと泣いた事だけは覚えてる。
厳ついお父さん…。
頭はツルツルでスキンヘッドというお父さん…。
昔はぼーそーぞくというバンドをやっていて、パレードメロディーを奏でていたというお父さん…。
その時の仲間で親友だったのが龍平おじさん…。
大樹(だいき)という名のお父さんを『大ちゃん。大ちゃん。』と呼んで、よくお酒を飲んでいた事くらいしか記憶にない。
「その龍平の息子が悠真なんや。」
「悠真が?」
「そうや。お父さんの親友の子や。だから来夢も悠真と仲良くして欲しいねん。」
「別に…、仲良くはしたるけど…。」
上から目線で悠真を見る。
でも龍平おじさんの家は凄く遠いところにあるというイメージしかない。
お父さんとお酒を飲むと
「奈良まで帰るんは無理やから。」
と言うてはうちに泊まってた龍平おじさん…。
「今度からな。悠真達はおじいちゃんのアパートで暮らす事になったんや。」
「おじいちゃんのアパートに?」
うちの家族は5人家族…。
お父さんとお母さん。
弟と私…。
そして、お父さんのお父さんであるおじいちゃん。