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振り向けば…
第41章 ただいま…
持ち逃げされた金額は僅か100万程度。
そもそも今回の工事を引き受けた工務店はお父さんやおじいちゃんと付き合いの古い工務店。
「なんで、そんな事になったんよ?」
状況の確認をする。
その工務店で残りの工事が難しいと判断するならば私は自分の会社に相談する必要がある。
そもそも問題の起こりは元請けである工務店と下請けの間にブローカーという紹介者が居た事だ。
ブローカーという紹介者は自分達は工事作業が全く出来ないくせに紹介料という僅かなお金目当てに現場に潜り込んで来る。
関西ではそういったブローカーの数が多く、良くも悪くものブローカーも居ればタチの悪いブローカーも存在する。
その為に元請けはギリギリの工事代金しか下請けに払わない。
しかし下請け業者の紹介を済ませたブローカーはさっさと自分の取り分を貰って現場から逃げたがる。
今回のブローカーもそのタイプだったらしい。
理由を付けては下請けの工事を止めて工事代金の支払いをしなければ現場は動かさないと言い続けた。
やむを得ないと判断した元請けは100万だけを中間金として支払うとブローカーはその100万を持ち逃げしたのが今回の話。
「それで、下請けはどうするの?」
「契約は出来高払いやから、それに従う言うとる。」
ただ遅れに遅れた工期…。
持ち逃げされた100万については元請けが負担する事で合意に至ってる。
後は3ヶ月の工期延長を私が認めるかという状況らしい。
何故なら私は家主であり3ヶ月分の家賃収入が無くなる以上はその損失を元請けに訴える事が出来る立場だからだ。
「別に要らんよ。」
苦笑いでそう答える。
弟の学費の確保は出来ている。
銀行の貸し付け分はおじいちゃんが全部を済ませてくれてる。
私に被害は何もない。
ただ一人暮らしが伸びるだけ…。
ストーカー騒ぎがあったからお父さんだけが敏感になってる。
「お前が大丈夫なら。」
「全然、大丈夫。悠真も居るし…。」
私の免罪符である悠真を持ち出して両親を説得する。
私は大丈夫。
悠真が居る限り、私に心配する必要はないと言うてこの話は終わった。