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振り向けば…
第42章 神の湯…
今日は私の誕生日…。
深夜に私の車を走らせる悠真の隣で私はそっと欠伸をする。
「眠いし…。」
「お前が相馬さんに行きたいとか言うたからやろ。」
ブツブツと悠真が文句を言う。
だって、ほんまに私を誘うて来るとか思わんかってんもん。
財閥一族という超お金持ちの社長さんが私とのくだらない約束を本気にしてくれるなんて全く考えてもみなかった。
日本国内の公式ラリー…。
アマチュアに近いレースらしいけど、本物のラリーが見れるチャンスを相馬さんが私にくれた。
但し、時間までに約束のポイントに行かなければならないと悠真が言う。
「なんで、こんな時間にやるの?」
もうすぐ、日付けが変わる頃…。
「道路を完全封鎖して一般車両の通行止めをするから近隣に対して迷惑にならん時間を選んでるんやろ。」
私よりも知識のある悠真がお馬鹿な私に答える。
そう…。
警察の許可を取り一般車両の通行止めをするラリーだから私と悠真は通行止めになる前に相馬さんが居る約束の場所まで行く必要がある。
今回は奈良のとある山奥…。
その山の上の方へ向かうと何台かのゼッケンを貼った車の集まりが見えて来る。
悠真が車を停めると
「すみません、一般車両は停らずに進んで下さい。」
と赤いTシャツを着た男の人に注意を受けた。
「相馬さんに呼ばれて来たんです。」
悠真がそう答えると
「ああ、相馬さんに呼ばれた人?なら、これを着て貰えますか?」
とビニールに包まれた真新しい赤いTシャツを2枚渡される。
「スタッフはそれを着て貰って区別するんですよ。」
真冬の寒空の下に赤いTシャツを着た人が何人か居る意味がわかった気がする。