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振り向けば…
第43章 何でもない…
割と小綺麗な旅館の家族風呂…。
こじんまりとはしてるけど、湯船はしっかりと岩風呂になってる立派な温泉。
「わぁ!やっと温泉に来たって気分。」
ご機嫌で身体を流して髪や身体を洗う私に何故か悠真が背を向ける。
いつもなら私が嫌がっても擦り寄って来るくせに…。
私に背を向けて私と同じように髪や身体を洗う悠真の背中に寂しいとか感じる。
せっかく2人っきりなのに…。
ちょっと不満になってまう。
湯船に私が入るとわざわざ私とは離れた場所に悠真が入って来る。
「ゆう…。」
「ん?」
「なんか気に入らんの?」
藤井さんの件で私に怒ってるのかと不安になる。
「別に…。」
穏やかな笑顔を私に見せる。
ならばと私から悠真に近付いた。
「あー…、悪い。あんまり、こっちに来んな。」
悠真が私から目を逸らす。
「なんでよ!?」
今更やろ?
更に悠真との距離を詰めてみる。
「やめろ…、その気になる。」
「あかんのか?」
「家族旅行にゴムなんか持って来てないわ。」
私から逃げるように悠真がまた離れた。
「そんなん…。」
気にするなとは言えない。
お父さん達にすら関係を伏せてる今の状況に妊娠をするリスクは犯せない。
「ゆう…。」
泣きそうになる。
遠いのは嫌だよ…。
そう思うのに俯くしか出来なかった。
「俺が悪いから…。」
寂しい声だけがお風呂場にエコーして響く。
後は無言のまま温泉に入り続けた。
2人で来たのに1人で来たような気分の温泉。
これ以上は逆上せるからと私よりも悠真が先に湯船から出て行った。