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振り向けば…
第5章 悔しいけど…



初めての体験にふわふわとしてた。

自分が自分じゃないような感覚。


「来夢…、タオル…。」


プールから戻って来た溝口先輩が私に言う。

慌てて溝口先輩のタオルを渡すと


「俺の泳ぎ、どうだった?」


と笑顔の溝口先輩が聞いて来る。


「カッコ良かったです!」

「そうかそうか、なら掛け声のお礼にカラオケに連れてってたるよ。こんちゃんも行くやろ?」


この試合の後はカラオケに行こうと溝口先輩が言う。


「俺、明日香が来てるぞ。」


こんちゃん先輩が照れたように笑う。

明日香先輩はこんちゃん先輩の彼女。

同級生でテニス部の部長さんだから美保の関係で私も挨拶くらいはする。


「俺、来夢が居るから明日香も来ればいいじゃん。」


私に抱きついて溝口先輩がこんちゃん先輩に言う。


「えーっ?マネージャーってぐっさんの彼女?」


他の先輩達が騒ぎ出す。


「俺のだよな?」


耳元で溝口先輩が聞いて来る。

違います!

なんて言える雰囲気じゃない。

黙ったまま小さく頷くと


「やったぁ!」


と子供みたいな笑顔で溝口先輩が喜んでた。

きっと溝口先輩の冗談だと思うてた。

水泳部の皆んなとカラオケに行く。


「来夢は何歌う?」


カラオケは苦手だ。


「歌った事ないです。」

「一緒に歌ってやるから大丈夫。」


それなりに聞いた事のある曲を溝口先輩が選んでくれて私と歌ってくれる。

支払いは割り勘だと聞いたのに


「来夢の分は俺が出す。」


と言うて溝口先輩が私の分を払うてしまった。

溝口先輩はバイトしてるから気にするなと私に言う。


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