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振り向けば…
第44章 これは現実…
中学の時に作ったお弁当の卵焼き…。
ちょっとでも味や見た目に失敗すると悠真から文句のメッセージが来た。
だから、それは悠真好みの悠真の為だけの卵焼き。
普通の人なら間違いなく萌奈さんが作る卵焼きの方が美味しいと言うに決まってる。
あれは悠真の為だけの卵焼きだから…。
それを作れるのは、この世界で私だけで居たいから…。
萌奈さんの話に生返事ばかりを繰り返す。
「おかわり…。」
悠真が取り皿を差し出した。
その相手は萌奈さん…。
有り得ないと私の頭が考える。
「萌奈ちゃんのご飯なら悠真がしっかり食べてくれるから助かるわぁ。」
おばちゃんは上機嫌。
「そんな…、お母様。今日は褒め過ぎですよ。」
照れた顔をしながらも、それが当たり前のように悠真の取り皿にエビやイカをふんだんに乗せたサフランライスをよそう萌奈さん。
その役目は私の仕事だったのに…。
私の代わりが既に居る。
「オカンの飯が不味過ぎんねん。」
「やかましいわ!馬鹿息子!」
いつもと変わらない親子喧嘩を微笑ましく見る萌奈さんが居る。
そこに居たのは私だったはずなのに…。
私の居場所が無くなって行く。
「ほら、来夢もしっかり食えよ。食わないからいつまでも小さいままやねん。」
悠真が私にそない言う。
今までの私なら、なんて答えてた?
頭がぼんやりとしか働かない。
「悠真さんはすぐに人に無理矢理にでも食べさせようとするから。」
「萌奈かて痩せてるからな。」
「太りたくないだけです。」
2人の弾む会話が耳に流れ込む。
神様…。
もう私の居場所は完全に無くなった?
これは夢だと言うて下さい。
ひたすら神様と会話を試みる馬鹿な私が居た。