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振り向けば…
第44章 これは現実…
ダイニングテーブルなんかなかったのに…。
今は存在するそのテーブルに萌奈さんが手際良く食事を並べて行く。
居場所がない私は突っ立ったまま…。
「お口に合えば良いけど…。」
萌奈さんが私を心配そうに見る。
「萌奈ちゃんの料理なら来夢ちゃんに全然、負けてないよ。」
おばちゃんが萌奈さんを励ます。
悠真がクスクスと笑う。
テーブルの上には私が作った事のない料理ばかりが並んでる。
キッシュ、ミネストローネ、骨付きラムのソテー…。
「来夢の飯は所詮家庭料理やからな。萌奈は専門学校まで行ったんやからレベルがちゃうって…。」
悠真が萌奈さんに気を使うのを感じる。
萌奈さんは高校を出て料理の専門学校へと進学をしたらしい。
その世界で本格的な料理を学んだ彼女だったけど、本気で自分のお店を持ちたいとその専門学校に進学して来た人達とは、なんとなくで進学した萌奈さんは考え方に温度差を感じた為に専門学校卒業の後は就職をしなかった。
第2の人生を探す為に新人クリエイターの公募に応募したのだと萌奈さんが言う。
「その程度やから、悠真さんが未だに私の卵焼きを認めてくれないの…。」
萌奈さんが寂しい顔で私を見る。
萌奈さんの話を聞きながら、ぼんやりと食事をするだけの私…。
味なんか全くわからない。
専門学校で学んだならレストラン並に美味しいのだろうとは思う。
私の隣ではおばちゃんが相変わらずビールを飲み続けてる。
私の前に悠真と萌奈さんが並んで座る姿を眺めながら食べる食事。
「来夢さんに卵焼きの作り方を教わらなきゃ。」
頬をピンク色に染めた萌奈さんがそない言う。
それは無理だよ…。
だって、それは毎日毎日、悠真の為に作り続けた卵焼きだもん。