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第46章 泥棒猫…

私も悠真のおばちゃんも建築業界の人間だからイヤリングなどのアクセサリーは使わない。

そんな物が落ちてれば、すぐに気付く家だからと悠真が言う。


「とにかく来夢が言う通り、萌奈がこの近所を彷徨いてるのは事実やな。」


悠真のため息の理由は萌奈さんがストーカーに変わった事だ。

母親が居ない子として悠真のおばちゃんが萌奈さんを甘やかした理由は理解が出来る。

私が突然現れたせいで、そんな萌奈さんの仕事も母親的存在も奪われたと萌奈さんが私を憎んでる可能性を悠真が考える。


「私ん時みたいに、井上さんに相談は出来ないの？」


井上さんは悠真の顧問弁護士。

ストーカーには弁護士だと学習をした私が聞く。


「無理や、今の段階では萌奈に大義名分がある。」


冷静な悠真が私の単純な考えを否定する。


「大義名分？」

「嫌がらせの域を超えてないって事や。萌奈がここに住んでた事実があって自分の荷物を取りに来たってだけならストーカーとは断定は出来ない。」


私が泥棒猫と脅された事は証拠がない。


「来夢に被害が出たり、俺に対する嫌がらせがはっきりとしない限りは訴える事は不可能や。」

「なら、どないするの？」

「ひとまず東京の会社の方には報告をする。萌奈が俺の仕事の邪魔になってる事実だけを言う。萌奈がこの業界で仕事をするつもりなら、２度と俺には近寄らんようになるはずや。」

「ならなかったら？」


なんとなくで専門学校に行った萌奈さん。

なんとなくで始めたクリエイターのアシスタントなら別にこの業界に未練がないかもしれない。

私は悠真と居たくても建築から離れる事が出来ないから、萌奈さんとは正反対だと思う。


「しばらく様子を見る。とにかく萌奈はスルーして赤の他人やと思え。」


感情を持たない悠真はアッサリと割り切る。

感情のある私は怖くてそれが出来ない。

私だけが萌奈さんの影にビクビクと怯えて暮らす生活が始まった。