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振り向けば…
第51章 有り得ない…
世界遺産…。
1段、また1段と階段を登りながら世界に選ばれたその場所を噛み締める。
「そんなに来夢には重要か?」
悠真はただ面倒臭そうに階段を登る。
「世界遺産やもん。」
建築をやる人間にはある種の夢の場所…。
「スペインのサグラダファミリアみたいに自分が建築した物が選ばれた場所になるとか考えたら、ワクワクしてまうわ。」
「あれは未だに未完成やんけ?」
「そこがええねん。完璧な設計を雑に作るとか神への冒涜や。」
「相変わらず神様が好きやの。」
「任せろ!」
神々が鎮まる場所…。
決して自然を崩す事なく神々を崇める人々の手で様々な建築が施されたこの場所を隅々まで堪能しようと私はあちこちへと動き回る。
熊野大社、熊野古道…。
樹齢850年の大樹を眺め、苔むした石段を踏みしめながら自然と完全調和された当時の開発建築に私だけが感動する。
「運動音痴のくせに…、ちょこまかと動きやがる。」
500段近い階段を登り下りさせられたと悠真が口を尖らせる。
「やばい!やっぱり世界遺産って最高…。」
私だけがご機嫌の時間…。
「帰ったら、新作映画に付き合えよ。」
「わかってる。悠真が行きたいところにも必ず一緒に行ったるから。」
私だけが楽しんでばかりの時間を悠真に押し付けるつもりはない。
悠真とは対等で居たいと思う。
悠真と付き合うなら、そうしてやれとお父さんから教わったのはこの世界で私だけなのだ。
そうは思うても私の小さな身体はスタミナ切れで大阪への帰り道は爆睡する。
「ほら、来夢!さっさと風呂に入って寝るぞ!」
家に着くなり悠真が私に叫ぶ。
なんで悠真はほとんど眠らないのに私よりも体力が有り余ってんねん?
何度も欠伸を繰り返して悠真にお風呂に入れられた私は小さなお布団で悠真にしがみついて眠ってた。