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振り向けば…
第52章 無事だよ…
何はともあれ…。
引っ越しである。
やっと我が家が完成した。
工事代金の持ち逃げやら、下請けの反乱を受けながらも元請け工務店さんが頑張ってくれた。
アパートの方は一足早く完成した為に悠真の家からは先におばちゃんが出て行った。
「この荷物は?」
「悠真の家。」
「こっちは?」
「我が家に決まってるやん。」
毎回、毎回、悠真は私の引っ越しを手伝いながらも不機嫌を丸出しにして来る。
「何が気に入らんねん?」
「お前が俺ん家に住まない事…。」
この話は何回も話し合ったはず…。
「だから…、お父さん達に私らの関係を明確にしない限りは同棲とか中途半端な事が出来る訳ないやろ?」
「………。」
自分の言い分が通らないと完全にガキんちょになる悠真君の頭を撫でてやる。
「ゆっくりと考えるって約束やろ?」
「来夢はすぐに俺の事を放ったらかすやんけ?」
数々のメッセージスルー事件を持ち出しては嫌味を言うて来る悠真にうんざりとする。
「とりあえず、お父さんには話をするんやろ?」
「する。」
ひとまず私とは付き合ってる存在なのだと悠真からうちのお父さんに話す約束になってる。
「オッチャンにあかん言われたらめげそうや。」
悠真が不安な顔をする。
私に一番過保護なのは悠真よりもお父さん…。
その父親と戦うのに悠真は自分に自信がない。
普通の人なら『娘さんを大切にします。』とでも言うて終わる話。
悠真はそれが言えない自分に怯えてる。
『男は出来ない事を言うな。』
それが、うちのお父さん…。
「それでも私は悠真と居るから。」
「わかっとる。」
ブツブツと文句を言いながらも悠真が私の荷物を運んでくれる。