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振り向けば…
第52章 無事だよ…



自分が1人じゃないというだけで落ち着いて冷静に行動が出来る。

きっと私1人だけだと悠真にメッセージを送る事に必死になってまう。


「ガソリンスタンドを見つけたら言うて下さい。」


岩谷さんにそない言うて車を会社から出した。

ナビをテレビに切り替える。

いつもなら絶対にやらない事だけど今はどんな情報でも欲しいと思うから。

テレビ画面ではいち早く震源地付近で起きた火事の報道が始まる。

岩谷さんの家の近所ではないらしい。

それでも不安は半端ないと思う。

万が一があれば幼い唯ちゃんを連れて年老いたお母さんが避難するとか大変な事になる。


「家は僕が生まれ育った地元だから近所には同級生とかが居るんです。唯も慣れた人達ばかりだから大丈夫だと思います。」


私や会社に心配をかけないように岩谷さんが気を使い続ける。

絶対に岩谷さんを唯ちゃんのところに帰してあげなければ…。

何度も何度もそれだけを考える。

私も悠真のところへ…。

初めて悠真と本当の意味で逸れた気がする。

なんとも言えない嫌な感覚。

2度と会えなくなるような不安。

映画とは違う。

リアルに感じる被災の混乱。

岩谷さんと2人で冷静になる事だけを考える。


「車が増えましたね?」

「電車が停まってるから…。」


運行の目処が立たないというニュースばかりがやたらと目に付いた。

今日1日がずっとこんな感じなのだろう…。

混乱して様々な情報が入って来るのに私の車はなかなか現場に辿り着かない。

長い1日になりそうだと思う。

悠真に会えない長い1日を経験した時のように、この日も私の中の体内時計は有り得ないほどの長い時を刻む事になった。


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